エディターズ・コラム

第62回:『小説 東京ホテル戦争』を読む

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『小説 東京ホテル戦争』。この小説に面白みを与えていたのが、ホテルに長期滞在する紫京子という作家。関西弁でまくし立てるところ、こういうの、好きだなあ。

知人から送られてきた『小説 東京ホテル戦争』を読 んだ。作者は猪野晴子さん。初めてお見かけする名前で ある。版元は幻冬舎ルネッサンスで、07年3月に発行 されたばかりの作品だ。

帯にはこんな風に記されている。 「多額の負債、外資系巨大ホテルの謀略、そして廃業寸 前の老舗ホテル――若き女性オーナーはホテル業界の勢 力争いに勝利できるか!?」

主人公は広告代理店に勤める瞳。いまは亡き父が創業 したオリンピックホテルが瀕死の状態であることを知る。 そこで彼女は、かつて同ホテルに在籍し、改革案をまと めていた賢一郎を引き戻そうと、バリ島へ飛んだ。彼は、 世界有数のラグジュアリー・リゾートで活躍していたか らだ。

オリンピックホテルの創業者を敬愛していた賢一郎は、 瞳の願いを受け、東京へと戻った。そして、総支配人と なって改革プロジェクトを断行、同ホテルの盛名は甦る かに見えた。だが、そこにはある策略が…。果たして、 瞳はどう行動するのだろうか…。

あとは読んでのお楽しみというところだが、客室単価 に注目するところなど、作者はホテル業界をよく取材し ているようで、ちょっと間違えば、劇画コミック風に流 れてしまうような話を、しっかりした骨格を持った小説 に仕上げている。

中でも印象に残ったのが、瞳がスタッフを前にして語 る次の一節だ。少し長くなるが、引用させていただこう。 「真のサービスとは、すべての瞬間が最後だと自覚する ことです。そうすればおのずと行動はともないます。… 目の前にいるお客様一人ひとりに対して、このホテルを 出た瞬間に死んでしまう人なのだと思って接してくださ い。上品ぶろうだとか、かっこうつけようだとか、ばか にされたらどうしようとか、そんなことは一切考える必 要はありません。お客様の心の中に何を残したいのか。 それだけを考えて行動してください。おじぎの角度が何 度かだったなど、お客様は覚えていません」

その通りだと思う。ホテルに出た瞬間に死にたくはな いが、こちらの目を見ないで、ただ馬鹿丁寧に頭を下げ られても、ちっともうれしくないのである。

ところで、この老舗ホテル、モデルはどこだろう。T 字型の建物、ラーメンが名物、真珠の間、1963年の 開業、とくれば、あのホテルだと思うのだが…。