今日、クラシックホテルと呼ばれる歴史あるホテルは、独特の建築美を備えています。 『神は細部に宿る』という言葉がありますが、装飾一つ一つにえも言われぬ風趣が感じられ、クラシックホテルの中に身を置きますと、これまで体験したことのない感覚を味わうことになるでしょう。ホテル自体がタイムマシンのようで、過去へ時間旅行をしているような気分になってくるから不思議です。
クラシックホテルの魅力は、現代のホテルでは見られない雰囲気にあります。外観や内部を彩る装飾をじっくり観賞して、ホテルが積み重ねてきた星霜を体感してみてください。そして、長年にわたり受け継がれてきた料理に舌鼓を打ち、職人の風情を漂わせるベテラン従業員の話に耳を傾けてみましょう。そこには明治、大正、昭和の激動の時代、ホテルという飛びきり高級で最先端の文化を築いてきた洒落者で先駆者たちの物語が垣間見えるに違いありません。そうした洒落者たちの物語を読み取ることにも魅力があります。
庶民から見て雲の上の世界だったホテルは、その昔どのような光景を見せていたのでしょうか。クラシックホテルを一軒、また一軒と巡るに従って、先駆者たちの物語が蓄積され、また自分流の空想や想像、好奇心が肉付けされて、いつの間にか、あなた自身の心も豊かになっていることでしょう。
文:富田昭次